先輩Rと私A

【睨む】

R先輩は、霊運がない。 いわゆる「男/女運がない」と同義で、タチの悪い浮遊霊や動物霊からは好かれ、守護霊や土地神などの善い霊からは嫌われる。(ちなみにR先輩、男運のほうもないらしいが、それはまあ別の話だ。) 真夜中に左手が痛いので起きたら歯型…

【葬列】

夏の日差しが降り注ぐ、昼間のカフェテラス。 「で。なんなのよ、そのざまは」 テーブルの対面に座ったR先輩が、半眼で言う。 黒いシャツに黒いショートパンツという格好のR先輩は、私の着た黒いTシャツと黒いデニムスカートを交互に示し、鼻で笑った。 「私…

【守護■■】

私は生まれつき、霊感が強い。まだ小さなころから、人ならざるものを見てしまうことがよくあった。けれどそれで怖い思いをしたり、なにかしら害を及ぼされたという記憶はまったくない。 どうやら私には、相当に強力な守護霊がついているらしく、それが悪霊か…

【おこたとみかん】

「だいたいさ、取り憑かれるっていうのは甘えなのよね」 おこたでみかんを食べながら、R先輩は言う。 「よく、自分や家族が悪霊に取り憑かれて妙な行動をとる話とかあるけどさ。甘えよ、甘え。心身ともに健康なら、霊に取り憑かれたりしないっての。死んだヤ…

【闇へ曳く手、あるいは私と先輩が同じ布団で眠るようになったわけ】

私とR先輩は、よく一緒に旅行にいく。そして、同じ布団で眠る。先輩がそうするのには、ちょっとした理由がある。 その理由を話すには、まずは私と先輩が経験した、ひと夏の苦い思い出を聞いてもらわなくてはならない。 ある年の、夏休みも終盤の八月中旬。私…

【私のこと、憶えてる?】

ある休日、R先輩と一日中一緒に遊んで疲れた私は、帰りの電車の中で居眠りしていた。隣りではR先輩が携帯ゲームをやっていたため、降りる駅が来たら起こしてくれるだろう、という甘いもくろみもあった。 ふと気がつくと、人影まばらな車両の中で、私の目の前…